花豆さんお手紙ありがとうございます。トピックたくさんで充実した日々を感じさせます。
こちらはここ数日ですっかり気温も下がり、朝起きてもまだ真っ暗で日中もどんよりとした灰色の景色が続き、オランダらしい初冬という感じになってきました。
原画展お疲れ様でした。また『ねこの描き方れんしゅう帖』ご献本くださり本当にありがとうございます。読んで眺めてるだけで結構満足してしまい、まだ描くまでには至っておりませんが(なぞるの勿体無いとか思ってしまいがち……)紙や筆(ペン、鉛筆)などについても言及しており気軽に始められそう!と思いました。早速、重版もかかったようで本当にめでたいです。ミリオンセラーとなった際にはぜひご馳走してください。そういえば『猫のいる家に帰りたい』も重版かかりましたね。こちらも本当にめでたい。
家事の分担悩ましいですよね。我が家は連れ合いが僕の作る料理をそんなに好きじゃないので基本ご飯は連れ合いが準備して片付けなどは(状況にもよりますが)僕がするという感じです。お昼なんかは自分の分は自分で作ることがままあるのでそういう時に食材問題が発生したりします。
ご子息は今、魚屋さんのお手伝いとかされているのでしたっけ?魚を仕入れてくるなんてすごいです。結構捌くのも手間だったりすることが多いのにそれを厭わずきっちり料理するのもすごいですね。あとは鮮度のあるうちに食べきれる量がどのくらいなのかに気づいてくれたら……。
ちなみに我が家は11月末にもワンオペの日々が待ち構えており、今から戦々恐々としております。海外にいると何かあった時に頼れる人の少なさが如実に響きますね。
そしてニュー小泉ハウス、話がトントンと進んでおり今後の展開も楽しみです。我が家は賃貸なんでどこまでいっても他人の家なので全然盛り上がりませんが自分の家となるとワクワクですね。自ずと真剣になりますね。本気と書いてマジと読むやつですね(そもそも「本気」と書いてない)。
お話しぶりからすると実際に住むようになるまでには今少しお時間かかりそうですが、小川奈緒さんの『直しながら住む家』みたいな感じになるのかなぁと進捗楽しみにしています。ご迷惑ではなければいつか遊びに行きたいです。蟻鱒鳶ル(ありますとんビル)みたいに20年かけて建築とかにならないことを密かに祈りつつ。
こちらの近況といたしましては今住んでいる街が10月3日はスペインからの侵攻に耐え切って解放された記念日とのことで例年お祭りがあるのですが今年も10月1日からは街の中心部に屋台や遊園地のアトラクション(観覧車やローラコースター、お化け屋敷など)が多く設置されて大盛り上がりでした。
この街のシンボルカラーでもある赤と白を基調とした記念日ジャケットとかパーカーとかも販売されるのですが、着ている人も多く見かけました。
アトラクションの値段も10月1日、2日と値段が上がっていき最終日の3日は祝日になる事もあり一番高い値段になるそうで、よくできているというか商魂逞しいというか……。
僕は一番高くて、混雑しそうな3日は避けて2日に中心部に行ったのですが昨年は家族だけで行っていたのが今年は子供の学校の友達とその父親と一緒に周るなどこちらに住んでから1年が過ぎて子供が積み重ねてきたものを感じながらの解放記念日でした。あっそうだ、もしUFOキャッチャー得意でしたら今度取り方のコツを教えてください。あれ取れる気がしません。
また10月は日本で衆議院選挙があった関係で初めて在外選挙に行ってきました。これがなかなか大変でした。
まず、海外でも引き続き投票するためには”在外選挙人”というものに登録をしておかなければなりません。我が家は離日する前に登録を済ませていたので選挙できましたが、これがない事には日本国民であっても投票できません。
さらに投票する場所は大使館のみで期間も水曜から土曜の9時ー17時と日本に比べたらはるかに短い期間しか投票するチャンスがありません。
まだ僕が住んでいる街から日本大使館のあるハーグまでは日帰りでも行ける距離なのでそこまで負担じゃないですが遠方にお住まいの方も多くいるわけで……。
投票した後に子どものクラスメイトのお父さん(フランス国籍)と投票の事を話したら「フランスは国外在住者はオンラインで投票できるよ(国内の人はオンラインではないらしい)。」と言われてガクッとなりました。
オンラインの危険性は重々承知しつつも限定的に対応するとか、オンラインじゃないにしてももう少し投票しやすくして欲しいと痛切に思いました。また今回にみたいに「選挙しますよ」と言い出してからその投票日までの期間が短いのは諸々準備する側にも負担が大きいのではないかと思いました(実際国内でも投票所入場券が期日までに届かなかったところもあったと聞きました)。
海外在住者は他に投票用紙を郵送してもらってそれを返送するという制度もあるようなのですが、こちらは現地の郵便事情にも左右されてしまい4割くらいは期日までに届けられず死票となることも多いそうです。
今回この在外投票を体験してみて現状の仕組みは「投票を少しでも多くの人にしてもらいたい」という姿勢では全然ないよなぁと思わずにはいられませんでした。
ちなみに大使館での投票は、まず投票用紙を申請する用紙に氏名などを記入した後に「何に投票するか?」を選ぶようになっていました。今回だと衆議院小選挙区、比例代表、国民審査(人によってはその他に補選などもあったりします)。その用紙を記入したらそれぞれの投票用紙と記入した内容が見えないようにするための封筒と返送用の封筒が渡され仮設の(どこでもそうですが)投票用紙を記入する場所で記入し、それぞれ封をします。
なお通常だと記入場所の壁には選挙区の候補者の名前一覧と国民審査の対象者の名前のリストが貼られていますが、投票者が日本を出る前にいた自治体に紐づくのでそれぞれバラバラなので全選挙区の候補者が載っているファイルが何冊が置かれていました。
記入し、封をしたら返送先の選管の住所などを選挙立会人(という名称でいいのかな)に確認してもらい投票完了となりました。封筒やら申請書やら書くものが増えて日本で投票するほど気楽ではないとしみじみ思いました。それでも投票は大事な権利なので今後も頑張って続けていきたいと思います。
そいうえばイスラエルの件、オランダでも先日結構大変なことがありました。イスラエルのサッカーチームとオランダのサッカーチームがアムステルダムで対戦したのですがイスラエルのチームのサポーター(元々極右的で過激なサポーターが多いらしいです)が試合前からアムステルダムで大暴れしていました。パレスチナの旗を垂らしていた家から旗を破って落としたりドアを激しく叩いて壊したり、反パレスチナの歌を大合唱して街中をうろうろしてオランダ人を襲ったりしていたようです。試合会場においてもスペインで起きた大雨による洪水の犠牲者に対して試合前に1分間の黙祷をする事になった時にも騒ぎ続け、黙祷の邪魔をしていたりと国の姿勢そのままのような傲慢で乱暴、エゴイスティックな行動をしていました。
この出来事は生徒から教えてもらったのですが、いくつかのメディア(日本も含む)を見るとオランダの人たちが暴れたみたいなトーンの見出しで報道されていました。生徒は「アヤックス(オランダのチーム)は5−0で勝ってるんだから暴れる理由がない」とオランダが加害者にされてる事に少し憤っていました。
※BBCでは「オランダでイスラエルのサッカーファンに暴力、負傷者も」という見出しでした。この件の歪さはこちらのリンク(ガザで何百人ものアスリートが殺されていることが不問に付されるなか、アムステルダムで「暴徒化」したのは誰だったのか(英文法解説つき)を読んでみるとサッカーの試合の事だけには収まらない深刻な問題であることがよくわかるのではないかと思います(長いのと英文解説が入ってる分少しわかりにくいですが)。
先日『京城クリーチャーズ』という韓国ドラマ(日中戦争中、大日本帝国の731部隊が中国から撤退した後、日本支配下のソウルで人体実験を続けた結果とんでもないクリーチャー(怪物)が生まれてしまい、それが大暴れするというエンタメドラマ)を見たのですが、随所に「支配する側への抵抗をする意味」を織り込んできており、ほぼストレートに登場人物にも語らせていました。それは「日本が悪」みたいなものではなく「人間という存在に非人道的な振る舞いをするモノ」に対する批判となっていました。
と前置きがだいぶ長くなりました。そのドラマのシーズン2で主人公は「なぜあなたは反抗を続けるのか」と問われます。それに対して主人公は「謝罪もしない奴に罪悪感を覚えてほしい、罪悪感も覚えない人には煩わしい目ざわりだと思ってほしい。忘れて欲しくないから」だと返していたのですが「その人(それは時に企業だったり、国だったり)がした行為を忘れさせない」という事にはすごく大事な意味があるのではないかと思いました。それは日本の歴史においての負の部分だったりももちろんしますが、今パレスチナで行われている事が決して誇らしいものではないという事を訴え続けるというのも大事なんだとそのセリフを聞いた時に思いました。
ちなみにシーズン1では「どうして人々の普通の暮らしを、命を奪った方が堂々としていられるのだ」と主人公の一人が敵に対して言葉を投げつける場面があるのですがこの言葉も今この世界の様々な場所に投げかけたい言葉だと思ったりしました。
日本だけでなく世界の先行きはどうにも暗めで、第二次世界大戦直前の時代の空気と似ているのではないかと個人的には感じていたりするのですが、希望は無くさずに胸に灯し続けていたいと思っています。「困難は分割せよ。」というルロイ修道士の言葉とともに。
そうそう、年末年始に一時帰国しますのでタイミング合えば壁でも登りに行きましょう。うちの子も最近週に一回ボルダリングのレッスンに通っていて、それを見学していたらなんだか僕も登りたくなってしまいました。