松山(花豆より)

ウエハースさん、ちょっとご無沙汰してしまいました。
お元気でお過ごしですか?
こちらは、6月9日までの松山での展示を無事終え、新刊書籍の作業に専念しています。

松山での展示は、猫歌人・仁尾智さんとの二人展だったのですが、いつもは仁尾さんの短歌を先にいただき、わたしが挿絵をつけるかたちで制作していた順序を、今回は仁尾さんのご提案で逆にして、わたしが先に自由に作品を作り、それを見て仁尾さんが「挿し歌」を詠む、というかたちになりました。
わたしにとってはお題がない状態で作品を作ることと、仁尾さんにとっては挿し歌が初の試みだったので、お互いに多少の不安はありましたが、やってみたらすんなりととても良いかたちで出来たので、大成功だったと思います。同じ額縁にわたしの絵と仁尾さん直筆の短歌を収めた展示方法も、とても好評でした。

自分では絵を普通の手順で描いているつもりでしたが、普通の手順というのも人にはわかりにくいもので(当たり前)、ちょうど制作過程を写真数枚に分けて収めていた作品があり、下描き、下塗り、途中経過、完成と、制作の手順を見せながら説明したら驚かれたりして、それが逆にわたしにとっては新鮮でした。たしかに制作過程って面白いかもしれないですね。作家としてはちょっと恥ずかしいけれど。

作品を送って設営はギャラリーの方にお願いし、仁尾さんとともに会期半ばに2泊3日で松山入りして、2日間在廊しました。東京から来てくださったお客さまもいらして、にぎやかに、本当に楽しく3日間を過ごしました。猫好きしかいない空間で猫の話ばかりしていたような気がしますが、でも猫の話は尽きないものですね。

路面電車の走るほどよい広さの松山市は、とても心地よい街でした。2月に下見と称して一度行ったので、街の雰囲気や電車の乗り方などはだいたい理解でき、今回はまごまごすることもなくリラックスして過ごせました。ギャラリーのオーナーさんが連日ことごとく美味しいお店に連れて行ってくださって、2日間しっかりお酒をご一緒し、3日目は夕方の飛行機の時間まで松山城や街の中を散策しました。お天気も良くて、こんなにのんびり一人での時間を満喫することも久しぶりで、本当にキラキラした思い出です。
また行きたいなぁ、松山にも、どこか他の地へも、できれば一人で(笑)。

さて、東京はというと、今日はあいにくの雨ですが連日初夏の陽気です。暑いです。紫陽花も終わりかけなのに、梅雨入りはもう少し先なのか今年は遅いですね。オランダもそろそろ暑くなってきましたでしょうか? 変わりやすいお天気とのことですが、マラソンの日は熱中症になりそうな暑さだったとは……ご無事で何よりです。フルマラソンを走られるとかすごいなぁ。

そうだ、根井さん、ご就職おめでとうございます!
社会を教えるにあたって、本屋さんをされていた経験などが役に立ったりすることはあるのでしょうか? 本をたくさんお読みになっていると思うので、なんとなく授業も色々な引用とかしながら、とても楽しく進められているんじゃないかと想像しています。授業の雰囲気なども教えていただけたらうれしいです。
わたし、実は中学高校の美術教師の免許を持っておりまして……その気になれば先生になれるかもしれなかったのですが、絵を教えるということを頭でっかちに考えすぎて、かろうじて免許は取ったものの半年間母校の産休代理に入っただけでやめてしまったんですよね。人前で話すことも苦手だけど、子どもたちそれぞれが持っている感性に影響してしまうことが怖いというか、そんな理由だったかなと思います。絵を教えるって難しいなと思います。社会を教えるのはまた全然違うとは思いますが、どんな感じなのでしょう?

話、急に変わりますが、息子のドジョウ、魚好きの彼が飼いやすさなど色々調べて決めたようです。親は一切手伝わない約束で飼い始めましたが、一生懸命自分だけで世話していますよ。そうそう、大の魚好きなので進路もそちらの方向にと思っていたら、なんと絵を描きたいと言い出しました!えー!まじでー!?ぎゃー!! そちらの苦労はわりと知っているつもりなので、できれば魚の方が……と思っていたのに、血は争えないのか、ううう、いや、うれしくないわけではないのですよ、でも何とも複雑な心境です。そんな親の思いを尻目に、本人は嬉々として週1回のデッサン教室に通っています。

「道が二つあったらより困難な方を選べ」的なことを誰かが言っていて(すみません、失念しており…)印象に残っているのですが、子供のこととなると、つい心配が先行して苦労させたくないと思ってしまうのは、親心かもしれないけれど、ちょっと気をつけないといけないですね。
まぁ、頑張れ息子よ。回り道でも横道でも獣道でもゆけば良い。(なんて大きく構えたいものですー。)

息子、「障害」という名付けの効能を享受しつつ、レッテル貼りの切なさもかいくぐって、色々な人に助けられながらここまで来ました。本当に、名前の有無は別にしても様々な人を受け入れられる寛容で優しい社会がいいですね。絶対楽しい。

あら、わたしも長くなってしまいました。
季節の変わり目ですのでどうぞご自愛ください。
またオランダの風を感じられるお便り、楽しみにしています。